5. 九大病理オリジナル開発品について

剖検では様々な特殊な道具・製品を用います。
当部門が独自開発したオリジナル製品や剖検数が多い施設ならではの製品などを紹介します。

 

1.肺ホルマリンポンプ
当部門が開発した“肺固定用ホルマリン注入器”です。多くの施設では、点滴のようにホルマリンを肺気管支に入れるのが主流だと思いますが、当部門では剖検が年間100件を超えていたことから、迅速な作業が求められるため開発されました。電動ポンプを使用し、チューブの先を肺門部気管支に刺し込み、電源を入れるだけで肺にホルマリンが注入されて、肺が膨らみます。気管支の先までホルマリンが注入されるため、きちんと肺の末端まで固定されます。

ポンプ全体図 ホルマリンの流れ
2.頭蓋骨の接着剤
開頭後の縫合の際、以前は外した頭蓋骨を元の状態にはめる方法でした。V字に開頭しているので、頭蓋骨がズレることもめったにありませんでした。しかし、近年は御遺体の高齢化も進み、頭部の皮膚が柔く伸びる症例が増え、伸びた隙間により縫合後に頭蓋骨がズレることが増えてきました。この対策として、血液や水で濡れ油分も多い接着面に使える即効性の歯科用接着剤を頭蓋骨の接着に用いることにしました。その結果、頭の形の保持がより強固で、解剖前と同じ状態でお返しできるようになりました。もともと口腔内に使用するものなので、御遺体への悪影響はありません。現在では開頭症例全てで使用しています。
使用している接着剤

3.ホルマリンタンク
当部門が開発した “ホルマリン希釈装置”です。50Lのタンクが2個セットになっており、多くの容量を貯蓄できます。ホルマリン原液の容器を開栓し、裏面に設置したポンプのホースを差し込み、スイッチを入れるだけで、青いタンクにホルマリン原液が注入されます。水位計の所定のラインまでホルマリン原液が入ったら、水道の蛇口を捻ると水が注入されます。こちらも所定のラインまで入れると、希釈ホルマリンが完成します。ホルマリン原液の蓋を開けるだけなので、ホルマリン暴露はとても少なく、ホルマリン蒸気や漏れる心配もありません。また、既製品と違い、簡易的なシステムで作製されているので壊れにくく、修復がしやすいです。

全体像 上部 背部

4.パスボックス
パスボックスとは、物品をクリーンルームへ出し入れするときに利用される二重ドア付き箱形の装置です。当部門では、“解剖室-臓器切出室・臓器保管庫”の物品搬送に使用します。摘出臓器を入れたバケツ・ホルマリンなどは全てパスボックスを経由して行っています。解剖室の空気を遮断し、2つのドアを同時に開放しない構造のため、バイオハザード対策としても有効です。また、当部門のパスボックスは、通常設置されるものと異なり、床との段差を無くしているため、台車に乗せた臓器バケツを持ち上げることなくスムーズに運ぶことができます。

5.骨切断器
作業台はステンレス製、刃はステンレス鋼でできており、錆びにくい・洗浄やすい・傷がつきにくい…という特徴があります。内部に歯車があり、それにより刃の張りを調節でき、簡単に刃を交換できます。もともとは摘出した胸骨や腰椎の断面を出すのにストライカーを用いてましたが、この切断機だと、ストライカーとは比べ物にならないくらいスムーズに、綺麗な断面で切断できます。現在でも使用されています。ただし、振動して切るストライカーと違い、こちらは高速で刃が回転しているので、使用時は、より細心の注意が必要になります。